「日本人の歯に対する意識・知識について」に関するコラムが、日歯日報 2012年7月5日 第1567号に掲載されていましたので、転載いたします。
歯に対する意識・知識-つまり、デンタルIQ。この言葉を私が初めて知ったのは今から28年前の昭和59年、33歳の頃。ある歯科大学の矯正学の教授を取材した時でした。教授は「歯科界にはまだまだ潜在需要はある」ということで、次のように話されました。
「日本人はまだまだデンタルIQが低い。子どもに矯正をしないと親の恥であるという意識が欧米ではあるのに、日本の親の意識はまだまだです。矯正をしておかないと、大人になると歯槽膿漏(今日では歯周病)になるのです。今後、デンタルIQをもっと高めていけば、歯のマーケットはもっと増えると思います」。
そのデンタルIQ-もし私の両親がもっと高かったら、私の人生は、だいぶ変わっていたかもしれないと思ったりもしたものです。
実は、私の中切歯の1本は斜めに生えています。小学校1年生の時、自転車事故で顔面を路面にぶつけて額に9針、鼻の下を3針縫いました。それ以降に生えてきた永久歯の中切歯がその時の影響で斜めに生えてしまったのです。別段これでいじめにあったこともなく高校生となり、アナウンス部門全国第1位だった放送部に入部。その試験で私は制作に回されてしまいました。その理由は、「さ行の音が抜けてしまう」こと。斜めの歯から空気が漏れるのです。もし矯正をしていたら…アナウンサーの道を歩んでいたかも…。
だからと言って、それで両親を恨んだことはありません。ただ、矯正など歯に関する知識があるだけで対応は大きく違ってきたでしょう。正しく広い知識があると、そこに区別もなくなるし、夢の扉の数を減らす事もなかったのです。
ちょうどその頃に生まれた娘が中学生になった時、しっかりと歯の矯正を行いました。私はデンタルIQが高いから、と言っているのではありません。もはや歯の矯正は当然の時代になっていました。歯科の矯正の方々が口にされたように、日本人のデンタルIQが高くなったからであり、さらにそれを口にされただけではなく、実現するべく活動されたからだと強く感謝しております。確実に社会を変えようと思えば変えることができるのです。
娘と同じ頃、私は斜めの中切歯を治療し、今は綺麗な歯並びです。心なしか、以前以上に笑顔で過ごす時間が長くなったように感じられ、免疫力もアップしたように思っています。
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